
Episode #3
ものは、いくらで売ればいいのか ― 木工作家・楳田亨樹 × 白鳥文明
<p>瀬戸内に浮かぶ周防大島。お寺に生まれ、35歳で京都から島へ帰ってきた白鳥文明さんは、お寺と畑とジャム屋を抱えながら、ろくろを回して花器を焼く。「やりたいことしかしてない。それで飯が食えたら、言うことない」。</p><p>今回の対談相手は、2019年に島へ移り住んだ木工作家・楳田亨樹さん。家具の街でものづくりと営業の両方を叩き込まれた手が、今は島で椅子や器を生み出しています。二人が出会ったのは、娘夫婦が始めたジャム屋の二階でした。</p><p>話は、作り手なら誰もが突き当たる一点へ向かいます――ものは、いくらで売ればいいのか。文明さんが思い出すのは、陶オブジェの第一人者だった恩師の言葉。「今ポケットにある金を、全部出せと言えばいい」。本当に欲しい人は、有り金すべてを差し出す。たとえ千円でも、手放す方は文句を言ってはいけない、と。</p><p>一方の楳田さんは打ち明けます。「売れるもの、売れるものと考えるうちに、自分の作りたいものを見失いかけている」。その背中を、文明さんはこう押す。「売れないものも、作っていい」。</p><p>連休に誰も使わないギャラリーで焼いた、100個のミニ花器。同じ形は一つもない。3人だった孫のクラスが、中学で20人になって「目がくらむ」と言った話。少しずつ人が減っていく島で、それでも作り続け、売り続けるとはどういうことか。値段の向こうにある、ものと人の話を、二人の手の言葉で。</p>

